i giorni della merla イ ジョルニ デッラ メルラ2018/01/30 22:39


先週の大雪ではここ茨城県中央部でも数年ぶりに30cmくらい積もった。
その後も気温があまり上がらず、今も日陰にはだいぶ残っている。

そういえば今は1月の末ではないか。
どうりで寒いわけだ。
まさに今が、一年で一番寒いのだから。


ラボラトリオ(楽器製作)の授業では一人一台のbanco(バンコ 作業机)があって、マエストロ(先生)が巡回しつつ個別に指導する、そういう方式だった。

僕のbancoは教室の一番はしで、となりは17歳のイタリア人、ファビオの席だ。

僕はいつも彼としゃべって、普段の生活、何食べたとか、彼女とどこ行ったのかとか、わからないイタリア語とか、いろいろ聞いていた。

その日は何も質問していないのに彼のほうから話してきた。

「今のこの時期のことを i giorni della merla (メルラの日々)っていうんだ。理由は知らないけど」

僕は 「何? メルラ?」 と辞書を引く。
メルロは鳥の名前で、ツグミの仲間。クレモナでもよく見かける、ハトとスズメの中間くらいの大きさの真っ黒い鳥だ。メルラはその女性形、つまりメス鳥である。

こういう話をしているとすぐにマエストロがやってくる。
授業中のおしゃべりを注意しに来たわけでは決してない。

「ファビオ! i giorni della merla は金土日か? 土日月か? まあいい。 ひらはーら、正確にいつなのかわからないが、一月の末の3日間のことを i giorni della merla というのだ。知ってるか? メルラはおかあさん鳥で、今頃は卵を抱いている。普段は10分くらいとかは卵を抱くのをやめて自分の餌をとりに行くが、一年で一番寒いこの3日間は少しでも巣を離れると卵が死んでしまう。だからメルラはじっと、何も食べずに3日間、巣で卵を抱き続ける。これが i giorni della merla だ。」

「ほう、そうですか」 と僕はノートに i giorni della merla と書く。
するとマエストロは満足そうに去って行った。


前にスペイン人が
「夏には暑すぎて仕事ができないんだ」
と真顔で言っていたのを思い出す。

そう、あの辺のラテンの国々では寒すぎても暑すぎても仕事は休むべきなのです。マジで。



( i giorni della merla には諸説あるようです。一般的に野鳥の産卵期は冬ではないようです。)