魂柱2012/12/17 22:53

当ブログは個人的な日記のような使い方をしていますが、ブログタイトルにあるように、私の本職はバイオリン屋です。(楽器のことでお悩みなどございましたらお気軽にお問い合わせください。)

たまにはバイオリン工房らしい記事を書きます。

テーマは魂柱です。こんちゅうです。

魂の柱、などという大げさな名前がついていることもあり、よく話題に上ります。
ちなみにイタリア語ではanima(アニマ)で、魂という意味です。

魂柱は丸い棒です。
楽器内部でつっかえ棒のように立っていて、これの位置をわずかに変えることで、鳴る音の調整が効きます。

かなり重要な部品ではありますが、『魂』って呼ぶほどの物なのかどうかはわかりません・・・。

今修理中のバイオリンの魂柱が、見たことないような煮しめたような色をしてたので、そうだブログに魂柱のこと書こう、と思い立ったのでした。

これです。
色から判断すると200年も経っていそうですが、実際はせいぜい50年てとこではないでしょうか。
この魂柱は色が濃くてつやもありますが、日焼けするような場所にあるわけでなく、手に触れる場所でもないわけで、おそらく最初から色とつやがついていたものではないかと推測されます。
本当に煮しめたのかもしれません。

今回交換する新品と比較すると、こんなに色が違います。

この”煮しめ魂柱”は交換が必要ですが、その理由は色ではありません。
問題なのは、魂柱の端面、つまり表板・裏板と当る面が、相手側のカーブと合っていないことです。

魂柱の直径はバイオリンで6mm、ビオラ7mm、チェロ11mm程度です。(条件によって変わります。)
なので端面の面積は大きくはないですが、できる限り「面」で当ててやりたいのです。
「点」当たりだと力が集中して表板・裏板を変形させたり割ってしまいやすくなるし、音も伝わり難そうです。
位置の調整をする際もうまくいきません。
今回の魂柱は端面が丸まってて明らかにダメです。

魂柱の作り方:
1.とっておきの最高品質の材料を出してくる。(最高品質ってどんなのかという話も始めたら長くなるし、魂柱に最高品質を使った方がいいのかどうかも本当のところよくわからないのですが、私は最高品質でやっています。)
2.材料の中でも最高の場所を選んで、割って、加工しやすい大きさにする。
3.鉋で削って、真四角の棒を作る。
4.四角の角を削って8角形にする。
5.同様に16角形にする。
6.32角形に・・・・・・ほぼ丸になったら
7.楽器に合わせて加工する。


こんな作り方だから手間はかなりなもので、とても割の合う仕事ではありませんが、楽しみ半分でやっています。
最初から丸棒で売ってる材料を買ってきたりすることはありません。

あ、今気付いたけど魂柱ってさ、「楽器の魂」なのかと思ってたけど、「作者の魂」なんだな。
こんな小さな、人目につかない部品だけど、魂込めて作ってますってことだ。
納得。

いいこと言うなあ、俺。


端面合わせのためには何度も設置したり取り出したりを繰り返しますが、出し入れも位置調整もエフ字孔からやります。
だから出すときは楽器をさかさまにして振って・・・という行為が必要になります。
それをしなくていいように糸で結んでおきます。
私は赤い糸を使用しています。

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